この世の大多数は、できるとしてもやらない人でできています。
なぜか大工さんや町の工務店といった人のことを「底辺」と呼んでいる人がいますが、彼らはほぼ真似ができません。持っている道具を一通り全部現在のお値段でそろえようと思ったら2000万円いくかどうかです。持ち家の人は、その道具をおさめておく面積が自宅にあるかもしれませんが(いや、しかし今や庭のない建売も多いですね)、道具をそろえて、更に運転資金を材木屋さん・金物屋さん・下職さんたちに滞りなく支払って、顧客から支払いが来るまで普段の生活ができるでしょうか?
まあここまで開業の難しいものを目指さなくても、ある程度の小金持ちなら商店経営くらいならできるでしょう。「東京には大資本があるから」なんて考えて廃業引退する方々のお店の後釜を期待する向きがありますが、残念ながら売り場面積を広く確保できないところで、しかも道も細くて売り物を搬入するにも苦労するようなところで積極的に商売したいなんて考える資本家はそんなにいません。そんな面倒を抱えるくらいなら、住民も一緒に追い出して再開発することでしょう。
お金がふんだんにあればあるほど、「金にならないことはやりたくない」というんです。でも、本物の底辺の人ができないのに、財産を抱えて逃げて行ったところで使う場所がどんどん小さくなっていくのを見送るしかできないのでしょうか。
投資?まず自分の街のために開業して自分の労働力をご近所に投資してみてはいかがでしょう。私の父は早くして亡くなりましたが、そろそろ同業者の理容師たちがごっそり引退します。お金持ちな方は身一つでやれる大学生の座を財産のない人々に譲り、専門学校に行って試験を受けて中古の椅子なんかをタカラスタンダードあたりで揃えて開業してみましょう。周辺の土地も価値が上がることでしょう。何しろ、そのうち遠くに行かなくてはヘアカットもままならないような街が増えるからです。
富裕層は富裕層らしく、自分の事業を持つべきです。お勤めさんは、むしろ財産を持たず開業のできない労働者にやってもらうのが筋ですから。